理想の自分と出合う。自分探しの方法が、ここにあります。

「自己変革3つのステップ」

2011年12月28日

性格の不一致

 ■目先ばかりの夫と合わない   読売新聞・人生案内より


  今日は、人生相談からです。


  相談者は、40代後半の女性。

  年下の夫の性格についての相談です。



  ご主人は35歳までフリーターで、
  今も派遣社員。


  7歳年下で、昨年、職場結婚したそうです。


  相談者は結婚を機に退職したものの、
  また働き始めたとか。


  ご主人は真面目で、趣味は自転車と
  クレジットカードのポイント集め。


  安い日用品を探して買い貯めるので、
  トイレットペーパーなど1年分くらいあるとか。


  お陰で部屋には買った日用品があふれ、
  片付かずにストレスがたまるようです。


  ご主人は目先のことばかりで、
  将来のことをあまり考えないのだとか。


  それを言うと不機嫌になり、
  最後はいつも夫婦げんか。


  感覚が合わない部分が
  お互いのストレスとなっているようです。


  これをどう解決すれば良いか、という相談です。



  回答者の樋口恵子さんは、この時期にまずまずの
  結婚をしたとほめて、結婚を祝います。


  そしてご主人の良いところを、
  一人遊びができることだと言います。


  生活のテンポや意識の違いは、
  適当な距離を保てる結構な条件だと言うのです。


  また、この相談者夫婦と
  まったく逆の事例があると紹介します。


  そして夫婦として、
  まずまずの良い結末であったと言うのです。


  話し相手のある結婚を選ぶか、
  けんかの種のない独身を選ぶが、
  どちらかだと言います。


  なぜなら、理想の男などというものは、
  どこにもいないのだからと。


  だから「まずまず」を
  大切にするようにと言うのです。


  毎日の楽しみはご主人のペースで、
  長期的な生活設計は相談者が担当する。


  役割を分担するようにとアドバイスします。



  私も、この回答に賛同します。


  要は、その現実にどんな意味を与えるか
  ということなのです。


  違いがあることを「許せない」と思うから、
  腹が立つしストレスも溜まります。


  でも、違いがあることを「喜ばしいこと」と
  考えることもできるのです。



  それがまさにこの回答です。


  ご主人に長期的な視点が欠けていると思うのは、
  相談者にその才能があるからでしょう。


  だったら、その才能を
  生かしたら良いではありませんか。


  幸いなことに、夫婦ともに働いているのです。


  日常の買い物をご主人にしてもらい、
  将来のための貯蓄を相談者がすれば良いのです。



  部屋が片付かないということも、
  少し視点を変えてみたら良いのです。


  部屋は、いつも片付いていないと
  いけないのでしょうか?


  片付けておく必要性があるのでしょうか?


  相談者が、片付いた部屋が好きだ
  とういうのはわかります。


  でもそれは好みであって、
  必要性ではありませんよね。



  好みの違いなら、妥協し合うことです。


  仮にあなたがカレーライスが大好きでも、
  相手がラーメンが好きなら、
  交互に食べようかと話し合うでしょう。


  それと同じことを、
  あらゆることに適用するのです。


  たとえば部屋のすべてを片付けなくても
  良いではありませんか。


  一部のテリトリーはご主人に任せ、
  自分のテリトリーだけ片付けるようにする
  という方法もあります。



  また、収納を工夫することを
  楽しむ方法もありますよ。


  この溢れた物を、どうやって
  目立たないように収納しようか?


  そう考えて、置き場所を作り出したり、
  コンパクトに収納する方法を見つける
  ゲームにするのです。



  どんな出来事に対しても、
  他の人や環境のせいにして
  不平不満を言うことができます。


  でも、そうしていて楽しいですか?


  楽しくないなら、
  変えたら良いではありませんか。


  自分の考え方は、
  自分で変えることができます。


  他人や環境を変えるよりずっと簡単です。


  自分を変えるだけで、
  地獄が天国に変わるのです。

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2011年12月23日

友人から拒絶

 ■20年来の友に嫌われた   読売新聞・人生案内より


  今日は、人生相談からです。


  相談者は、60代の主婦。

  友人からの絶縁についての相談です。



  20年来の付き合いがある友人から、
  「しばらく会わないようにしよう」と
  言われたのだそうです。


  その友人に対する相談者の思いやりが
  足りなかったことが原因だと。


  カラオケが好きだということで意気投合し、
  月に1回はカラオケで盛り上がる間柄。


  ところがその友人が経営する店が、
  最近うまくいっていないのだとか。


  それに対して相談者は、絵画やピアノを習い、
  ボランティア活動に励むという生活。


  「あなたは自分のことばかり考えているようで
   気分が悪い」と
  言われてしまったようです。


  自分の日々の楽しい話ばかりしていたので、
  嫌われた理由もなんとなくわかると言います。


  こういうときは苦労話や、
  悩みごとを言うべきだったのだろうか?


  自分は他人から明るい話を聞く方が好きだけれど、
  と思うのだそうです。


  世間知らずの自分にアドバイスしてほしい、
  という相談です。



  回答者の増田明美さんは、
  ショックだったでしょうと相談者を労ります。


  ただ、状況からすれば、
  友人が怒る気持ちもわかると言います。


  明るくなれずに愚痴をこぼしたいときもある。


  それを相談者に聞いてほしかったのではないかと。


  でも相談者にはそれを許さない雰囲気があり、
  引け目を感じてしまったのでは、と言うのです。


  もし生涯にわたって大切な友人だと思うなら、
  彼女に合わせて話をしてはどうかと勧めます。


  人が楽しんでいる姿に幸せを感じる人もいれば、
  そうでない人もいるのだからと。


  自分を出すことを控え目にして
  相手の話を聞くようにすれば、
  相談者の優しさが引き出されると言います。


  また類は友を呼ぶと言うので、
  日常の楽しい活動を朗らかに話せる友達作りも、
  同時に行うようにとアドバイスします。



  私も増田さんの回答に賛同します。


  相談者はおそらく、
  「友人の考え方が間違っている」
  と思っているのでしょう。


  だから、あえて「世間知らず」と
  自分を卑下してみせているのです。


  もし本当に「世間知らず」で
  自分が間違っていると思うなら、
  相談するまでもないことです。


  友人に自分の不明を詫びればよろしい。


  でもそう思えないから悩んでいるのです。



  これはよくあるパターンです。


  自分が間違っているとは思えない。


  それなのに、自分が不快な思いを
  しなければならないのは、何かがおかしい。


  相手の考え方が悪いからだと思うけれど、
  そう言い切るには不安がある。


  だから他の誰かに、特に権威のある人に、
  自分が正しくて相手が間違いだと言ってほしい。


  このような気持ちになるのです。



  今回のケースで増田さんは、やんわりと
  その相談者の思い込みを否定しています。


  人の価値観(考え方)はそれぞれで、
  必ずしも相談者と同じではないのだと。


  そしてそれは「タイプが違う」だけであって、
  どちらが正しく、どちらが間違いという
  ものではない
のだと。



  そして最後に、その友達が大切な存在なら、
  自分を変えるようにと言っています。


  相手を変えるのではなく、自分が変わるのです。


  その基準は、自分の考え方を貫くことと、
  友人との関係を良いものにすることと、
  どちらが重要か、という点だと言っています。


  この質の異なるものの比較にこそ、
  まさにその人らしさが表れます。



  そうすることは自分らしいことか?


  その基準で生き方を選択せよ
  ということなのです。


  絶対的な正解などありません。


  選択した結果、
  自分らしいと満足するならそれでよし。


  もし満足しないのなら、
  他の選択肢を選び直せば良いのです。


  人生とは、そうやって
  自分らしさを探す旅なのです。

posted by ジャンメダイ at 18:45| Comment(0) | メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月20日

知らなければ良かった

 ■夫、元恋人に20年前から連絡   読売新聞・人生案内より


  今日は、人生相談からです。


  相談者は、50代後半の主婦。

  元カノに好意を寄せる夫についての相談です。



  今年定年退職されたご主人が、
  結婚する前に付き合っていた女性と
  交際していることがわかったそうです。


  電話や直接会うばかりか、ご主人は贈り物まで。


  ただ、そのプレゼントは
  女性から送り返されてきたようです。


  また、ご主人がつけた娘さんの名前が、
  その女性と同じだったことも判明。


  ご主人にそれを言うと、
  20年前から安否確認で電話していたとのこと。


  さらに「お前を裏切っていない。
  それでも許せないなら離婚しろ。」と逆ギレ。


  知らなければ幸せな老後を過ごせたのにと思うと、
  悲しくて涙が止まらないとのこと。


  ご主人は平然としているそうですが、
  どう対処すればよいかという相談です。



  回答者の大日向雅美さんは、
  老後の夢が砕かれて、さぞ辛いことでしょうと
  まずは同情します。


  ただ、裏切っていないというご主人の言葉は、
  本当だろうと言います。


  安否確認というのを、年賀状や暑中見舞いのように
  考えてはどうかと勧めます。


  会ったり贈り物をしてたことは不快でしょうけど、
  相手の女性もプレゼントを送り返すほど
  分別がある様子だからと。


  娘さんの名前のことは辛いかもしれませんが、
  一方通行の憧れで、有名人の名前をつけるのと
  同じと考えることもできると言います。


  追求されて逆ギレするご主人も、
  悪いと知りつつすねている子どものようなもの。


  このように考えて、
  思い切り怒りをぶつけたあとはサラリと受け流し、
  どっしりと構えているようにとアドバイスします。


  それは相談者がご主人との決別を望んでおらず、
  傷つきながらも修復の道を探しているように
  見えるからだと。



  回答者が言うように、
  相談者が別れを望まないのであれば、
  私もこの回答が賢明な方法だと思います。


  つまり自分の考え方を変え、
  相手を許すという方法です。


  ただ、
  それが簡単にできないから相談しているのだと、
  相談者から言われそうですね。



  たしかに回答者が言うように、
  ご主人は浮気ではないのかもしれません。


  でも相談者の身になれば、
  自分が知らされてこなかったことが、
  そもそもの裏切りだと感じているのです。


  「やましくなかったのなら、
   どうしてひとこと言わないの?」


  そう言いたいのでしょう。


  その怒りをどうしたら良いのか、
  この思いをどうやって晴らせば良いのか。


  その方法を知りたいと思うでしょうね。



  これについては、私が常々言っていることです。


  過去に起こった出来事は変えられません。


  けれど、考え方を変えることで、
  経験(体験)を変えることはできます


  そして傷ついた心は、時間が癒してくれます。


  また、自分で自分を愛するようにすることで、
  癒しの効果を大きくすることもできます。


  方法としては、「鏡のワーク」
  「1年後の手紙」などがあります。


  参考:「心を癒す「鏡のワーク」」

  参考:「1年後の手紙を書く」


  これらの詳細を、ここで説明できませんので、
  それぞれ説明しているところを
  参考にしてください。



  ここでの大きなポイントは、
  本来あるべき考え方と、
  今の自分の感情をどう処置するかということを、
  一緒くたにしないことです。


  これを一緒にしてしまうので、
  問題がなかなか解決しません。



  たとえば本来の考え方は
  「夫を許すべき」なのだとすると、
  どうしてもそれができない自分がいる。


  すると「自分はダメな人間だ」と自己卑下するか、
  「夫が悪いから自分が苦しむのだ」と
  原因を相手に押し付けます。


  何度も言うように、他人は変えられません。


  それなのに他人のせいにするということは、
  解決を放棄することに等しい。


  また自己卑下というのも、
  逃避することで解決を放棄していること
  になります。


  「自分には解決する能力がない」と
  決めつけることですから、
  解決のための意欲などわくはずがありません。



  このようなことにならないように、
  本来あるべき姿(考え方)はこう、
  でも現時点での自分の感情はこうと
  はっきり分けること。


  そしてまずは、前向きな感情が
  沸き起こるようにする
ことです。


  そうすれば、本来あるべき考え方を
  受け入れる余裕
が生まれるでしょう。


  そして徐々に、新しい考え方に慣れるでしょう。


  正しくこの方法を用いるなら、
  どんな人でも必ず変わることができるのです。

posted by ジャンメダイ at 17:47| Comment(0) | メルマガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月15日

失くしたもの

 ■生き方を学ぶ物語の紹介   オフィシャルWEBサイトより


  今日は、私が創作した物語をお読みください。

  前回の「それでどうなる」の続きです。



  その日の夕食が済んだ後で、
  タカシは妻のサチエと娘のミホに、
  その日あったことを話した。

  会社をリストラされたこと、
  落ち込んでいたら托鉢僧に励まされたこと、
  大事な家族がいると気づいたことなど。

  「二人には迷惑をかけることになる。
   それは申し訳なく思う。
   でも、ボクはあきらめないから、
   2人も我慢してついてきてほしい。」

  そう言ってタカシが話を区切ると、
  沈黙が部屋を支配した。

  やはり、受け入れてもらえないのだろうか?

  タカシの脳裏に不安がよぎった。


  静寂を打ち破るかのように、
  サチエが軽い咳払いをした。

  「ウッウーン。
   私、明日、パートの仕事を探しに行くわ。」

  いつもの明るいサチエの言葉だった。

  「だーってー、パパの給料が少なくなったら、
   困っちゃうものねぇ。
   私にできることは、何でもやるわよー。」

  タカシは嬉しかった。

  「あ、ありがとう。
   しばらくは失業手当がもらえるだろうけど、
   収入が減ることには違いないから。
   ボクも、なるべくいいところに就職できるよう
   頑張るよ。」

  「さあ、明日から忙しくなるわね。
   パパ、がんばろ。」



  「さあ、寝よっか。」

  そう言って電気を消そうとするサチエに、
  タカシはベッドに横たわったまま話しかけた。

  「なあ、サチエ。
   さっき、ミホは何も言わなかったよなあ。
   やっぱりショックだったんだろうなあ。」

  「そうねえ。
   あのあと、そのまま部屋にこもっちゃったし。
   でも、大丈夫よ。私たちの娘ですもの。
   信じましょう。」

  そうサチエは言うと、
  パチリと部屋の電気を消した。



  次の日の夜、3人で食事をしていると
  ミホが口を開いた。

  「あのさ、言っておきたいことがあるんだけど。」

  「なに?」

  タカシとサチエが、ほぼ同時にそう尋ねた。

  それに驚いたのか、
  ミホは目を見開いて2人を交互に見た。

  そして、やや下を向いて話し始めた。

  「私、来週からバイトすることにした。
   今日、友達に聞いたら、
   いいバイト先があるって。だから...」

  「だから、来月からもうお小遣いはいらない。
   自分で稼いで欲しいものを買うから、
   心配しなくていいよ。」

  タカシは、胸がいっぱいになった。

  すぐにでもミホを抱きしめたいくらいだ。

  「そうか。受け入れてくれるんだね。
   ありがとう。」

  やっとの思いでタカシがそう言うと、
  ミホが言った。

  「いいよ、気にしなくて。家族じゃん。」

  こらえきれずに、タカシは嗚咽した。

  嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。

  自分は何も失わなかった。

  それどころかむしろ、
  より多くの大切なものを得た気がした。



  半年が過ぎ、タカシたち家族は、
  小さなアパートにいた。

  やっと就職先が決まったものの、
  給料はそれまでの半分以下になった。

  サチエのパート収入を合わせて、
  やっと以前の半分を少し越えるくらい。

  とてもローンの返済ができないので、
  マイホームは手放すことにした。

  借金がほとんど残らなかったことが、
  せめてもの救いだろうか。

  3LDKから2DKへと狭くなったため、
  持ち物の多くを売ったり、
  知り合いに譲ったりして処分した。

  それでもタカシの心は豊かだった。



  「なあサチエ、ボクはとても
   不思議な気がするんだよ。」

  日曜日の午後、
  食卓でお茶を飲んでいたタカシは、
  隣で繕い物をしているサチエに話しかけた。

  「えっ、なあに?」

  不意を突かれて戸惑うサチエに、
  タカシは微笑みながら言った。

  「半年前、ボクはもう死のうとさえ考えた。
   お前たちを殺して、ボクもあとから死のうと。
   もう何もかも失くしたと思ったんだ。」

  「ところが今は、まったく違う。
   失くしたものよりも、はるかに大きなものを
   得られたような気がしている。」


  「そうね、そうかもしれないわね。
   私も、そう思うのよ。」

  タカシの話に、サチエはそう答えた。

  「あなたの話を聞いた時、
   本当はすっごくショックだったの。
   でも、そのお坊さんが言ったことが、
   もっともだって思ったのよ。」

  「あなたも苦しんでいるんだって思ったら、
   私が落ち込んでちゃいけないなって。
   そう思ったの。」

  サチエの話に、タカシは初めて
  サチエの気持ちがわかった気がした。

  「そうだったのか。
   そうだよね。普通ショックだよね。
   でも、キミの笑顔に救われたよ。
   あのときは本当にありがたかった。」


  「だからボクは決めたんだ。
   ボクは一生キミを裏切らない。
   誰よりもキミを大切にするし、
   誰よりも愛するって。」

  「もしキミが
   ボクに愛想を尽かして離れていくなら、
   それは仕方ないって思うんだ。
   あの笑顔だけで十分だったから。
   でもボクは、一生キミに尽くそうって。」

  いつしかサチエは涙を流していた。

  「私もよ。
   あなたが正直に話してくれたことが
   とても嬉しかったの。
   こんな素敵な旦那さんを見捨てたら、
   絶対にバチが当たるなって。」


  「あなたのことが好きよ。
   だから私はあなたを見捨てない。
   あなたから追い出されても、
   絶対に出て行ってやらないから。」

  タカシとサチエは、
  互いに見つめ合いながら微笑んだ。

  そのとき、2人の後ろから声が聞こえた。

  「おー、暑い暑い!」

  そう言いながら、部屋から出てきたミホが
  足早にアパートの外へ出て行った。

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2011年12月13日

それでどうなる

 ■生き方を学ぶ物語の紹介   オフィシャルWEBサイトより


  今日は、私が創作した物語をお読みください。



  タカシは、崩れるように
  公園のベンチに座り込んだ。

  「はぁー、なんてこった。
   どうすればいいんだろう。お先真っ暗だ。」

  深いため息と共に、
  無意識に力のない言葉が漏れ出た。

  頭の中には追い込まれた未来が浮かんでは消え、
  気がつけば何度も同じことを繰り返していた。


  ふと気がつくと目の前に人の気配があり、
  すぐさま声が聞こえた。

  「そなた、死相が出ておるな。
   良かったら、わしに話してみぬか?」

  タカシが顔を上げると、そこに立っているのは
  托鉢姿の坊主のようだった。

  黒っぽい袈裟を着て、編笠をかぶっている。

  メガネの奥にある目は、優しく微笑んでいた。


  促されるままタカシは、
  自分が置かれた状況を語りだした。

  47歳になるのに急に会社をリストラされ、
  就職のあてもないこと。

  妻と高校生になる娘がいて、
  家のローンが残っていること。

  仮に就職できても今までのような給料は望めず、
  どうやって生活したら良いかわからないこと。

  「私、それほど仕事が
   できるわけじゃありませんけどね、
   真面目に頑張ってきたんですよ。」

  「遅刻もしないし、
   有給休暇だってそんなにとらずに、
   会社に貢献してきたんです。」

  「それが突然クビですよ。
   ひどいじゃないですか。
   どうして私が、こんな目に
   合わなきゃならないんです?」

  タカシの話は、だんだんと愚痴になっていった。


  そこで托鉢僧が口を挟んだ。

  「そうか。大変な目に合ったようじゃな。
   じゃが、起きてしまったものは仕方あるまい。
   これからどうするかが重要ではないのかな?」

  「そりゃそうですけど、
   私に何ができるって言うんです?
   もし就職先が見つからなかったら、
   一家心中でもするしかないじゃありませんか?」

  自暴自棄になったようにタカシがそう言うと、
  托鉢僧は優しい声で答えた。

  「ほう、そうなるかな?
   そうならない方法はないものかのお?」

  タカシは少し苛立った。

  「他にどんな答があるって言うんだい?」


  少し間を置いて、托鉢僧が言った。

  「たとえば、就職できないとしてどうなる?
   収入がなくなるじゃろうな。それでどうなる?」

  「それでって、ローンが返せないから、
   家がなくなるじゃないですか。」

  「それで?それからどうなる?」

  「そしたら今より
   小さいアパートを借りるしかないし。
   そうなったら生活保護でも受けなきゃ、
   食べるものも買えませんよ。」

  「ほう、生活保護を受ければ、
   最低限の生活はできるわけじゃな。」

  「いや、たしかにそうですけど、
   惨めじゃないですか。
   こんなダメな男が夫や親父で、
   妻や娘は愛想を尽かすでしょう。
   そんな惨めな状態で生きていきたくない。」

  「なるほど、惨めになるのじゃな。それで?」

  「それでって。そうなったら自殺しますよ。
   いっそのこと、死んだ方がマシだ。」


  タカシがそう言い切ると、
  托鉢僧は微笑みながら言った。

  「さっきと結論が違うようじゃな。
   一家心中するのではなく、
   そなた1人が死ぬんじゃな。」

  「ええ、まあ、そういうことです。」

  いつの間にか自分の考えが
  変わってしまったことにタカシは戸惑った。


  「じゃあ聞くが、もし良い就職先が見つかって、
   今までより給料が増えたらどうなる?」

  タカシは思わず托鉢僧を睨みつけた。

  「そんな良い条件の就職なんて、
   あるはずないじゃないですか!?
   このご時世ですよ。
   あんたは何も知らないから、
   そんなことを考えられるんでしょうよ。」

  怒ったようにそう言うタカシに、
  托鉢僧はまたも微笑みながら言った。

  「まあそう言わずに考えてみなされ。
   夢じゃと思うて。
   どうせ死ぬつもりなら、
   最後に夢くらい見ても罰は当たらんじゃろ。」


  そう言われてタカシは、
  少し落ち着きを取り戻した。

  「まあ夢なら。
   もし給料が増えて、
   ローンが楽に返せるようなったら、
   家族で海外旅行でも行きますよ。」

  「それで?それからどうなる?」

  タカシは托鉢僧が
  何を言わせたいと思っているのか、
  いぶかるような気持ちになった。

  「その後ですか?
   そりゃあ娘も成長して、就職したり、
   結婚もするでしょう。
   お金があれば、盛大に結婚も
   祝ってやれますよ。」

  「なるほどのお。
   それで?それからはどうなる?」

  「娘に子どもができたら、
   孫をかわいがることができます。
   好きなものを買ってやれるし。」

  「ほう。それから?」

  「そのうち定年退職して、
   妻と一緒に旅行へ行ったりして、
   楽しい老後を過ごしますよ。」

  「楽しい老後をのお。それで?」

  「人間ですから寿命があるでしょう。
   娘や孫たちに見守られながら死ぬんです。
   それでお終いですよ。」

  タカシは話を終わらせたくなって、
  そう言い切った。


  「そうか、死ぬのじゃな。
   では、最初の結論と同じではないかな?」

  そう托鉢僧が問うと、タカシはすぐさま反論した。

  「何を言っているんですか?ぜんぜん違うでしょ。
   最初のは惨めな思いの中で死ぬんです。
   それもすぐです。
   後のは長生きするし、幸せじゃないですか?」

  やや激昂したタカシに向かって、
  托鉢僧はやや強い口調で言った。

  「惨めか幸せかは、そなたが決めておるんじゃよ。
   それがわからぬか!?」


  「遅かれ早かれ、人はいつかは死ぬ。
   そしていつ死ぬかはわからん。
   それまでの間、どういう気持でいるかは、
   自分が好きに決めれば良いのじゃよ。」

  タカシは反論したくなった。

  「そうは言いますけどね。会社が悪いんですよ。
   会社が私を惨めにさせているんです。
   私が好きでやったんじゃない。」

  「夢じゃよ。」

  タカシの反論を気にする様子もなく、
  托鉢僧はそう言い切った。

  「そなたは夢を見ておるのじゃ。
   夢の中でリストラされて、腹をたてるかな?
   バカバカしいとは思わぬか?」

  「人は死ぬまで、夢を見続けるのじゃ。
   夢の中で、様々な出来事が起こる。
   けれど、それにとらわれておったら、
   いつになっても幸せにはなれぬぞ。」

  「そなた、どんな出来事が起こるか
   自分で決められぬじゃろう?夢じゃからな。
   いつまでも夢にとらわれ、
   夢に自分の気持を左右されて生きたいのかの?」


  タカシは、托鉢僧が仏教の教えを
  説いているのだとわかってきた。

  けれど、今は素直にそれを
  受け入れられる気分ではなかった。

  「そりゃあ理想じゃないですか。
   どんな出来事があっても、それに執着しないで
   幸せな気分でいられるなら最高でしょう。
   でも、私には無理です。
   そんな修行もしてないし。」

  「修行なぞ要らん。
   ただそなたが決めれば良いことじゃよ。
   これは夢じゃとな。
   それだけで惨めさから離れることはできる。
   それだけでも儲けものとは思わぬか?」


  たしかに夢なら、
  会社を恨み続けるのもバカらしい。

  それにこんなダメおやじも、
  漫画の世界なら面白いかもしれない。

  「夢」と考えてみようと一歩踏み出すことで、
  タカシの心にそれまでにない考えが広がった。

  「惨めさから離れたら、
   幸せを感じることを考えることじゃ。
   愛する妻や娘は元気か?
   世の中には、寝たきりの妻を持つ者もおる。
   娘を事故で失った親もおるぞ。」

  タカシはハッとさせられた。

  「そうか、私はすべてを失ったわけじゃ
   なかったんですね?」

  「そうじゃよ。いっぱい持っておるわ。
   そなた、目は見えるか?耳は聞こえるか?
   歩くことはできるかの?」

  あるものに注意を向けることで、タカシの心は
  徐々に幸せな気分に満たされていった。


  「なんとなく、わかったような気がしてきました。
   私には、たくさんのものがあるんですね。
   仕事くらいのことで、
   それをすべて捨ててしまうなんて、
   もったいないことなんですね。」

  「わかったようじゃな。
   そなたの死相も消えたようじゃし、
   わしはもう行くぞ。」

  そう言って立ち去る托鉢僧の後ろ姿に、
  タカシは思わず手を合わせたのでした。

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